nengoインタビュー

的場
nengoの活動は少しづつですが、賛同を得られてきています。nengoの活動いかがでしょうか。
坂本 氏
かなり高レベルのテーマですよね。流れは来ていると思います。
的場
坂本さんは、日本の街並みをどう思いますか?
坂本 氏
そうですね。
どんどん悪くなっていると思います。
建築とは凸凹を楽しむものだと思うんです。
その凹凸に太陽の光が当り、季節や時間を感じるものです。
昔は日本の住宅も庇があったりと凸凹がありましたが、今は容積ばかりを気にしていますよね。
その結果、垂直に伸びる建物が増え、町が巨大迷路のようになっています。
坂本二郎氏 坂本二郎氏
的場
そうですね。隙間を歩くような街並みです。
Y設計事務所のKさんも言ってました。「田園調布ですら、街並みが壊れてきている」と。
坂本 氏
田園調布もですか‥。
日本は容積率を目いっぱいとるのが当たり前になっていますよね。
その結果、空いた部屋が存在し、管理修繕費の積み立てが出来ず、機能しない幽霊屋敷のようになってしまっているところもあります。建築の経済化ですね。

また、インテリアや住まいに対して、一品豪華主義でした。思いつきでたくさんのものが集められるから、統一感がなくなる。
的場
街並みについてどう考えますか?
坂本 氏
家を買う人は、ほとんどの場合が一軒目はデザインを求める。
そして二軒目を購入する時に、やっと風土に合うものを求める余裕が出てくる。
流行のデザインのみを追求すると、刺激はあるけれど、それにはすぐに飽きてしまう。
町並みを安定させるためには建てて壊して、の繰り返しではなく、
住宅の中古市場をつくらないといけないと思います。
たとえば、現地に行かずとも、車のようにインターネットでも売買できるような市場もできるかもしれません。
そのためには家の履歴・データが必要になります。
その家歴書をすべての家が用意できるようになれば中古市場は活性化するのではないでしょうか。
的場
“デザイン”という言葉に疑問を持つようになったのですが、どれをデザイン住宅というのでしょうか。
日本においてのデザインとは、大衆化のためのものだと思います。
本当の意味での「デザインしている」とは何なのか、海外の人に聞くべきですよね。
ヨーロッパの人は小さなアクセサリーから何でもデザインしている。
坂本 氏
今の日本で「デザイン住宅」と言うと、「唯一無二で、皆がアッと言うような住宅」という捉え方が強いですね。
的場
唯一無二って必要でしょうか。
坂本 氏
そうですね。
日本の街が垂直迷路の街、狭くて密集しているという前提では必要な場合もあるのではないでしょうか。
そのような街で成り立つ事は、ごく限られていますから。
的場
そもそも街を変えるなら、狭くてはいけないですよね。
坂本 氏
”小さく狭くても孤立していたい人”と、”集合住宅に住みたい人”に分類できると思います。
現在の日本には前者が多いんですよね。

たとえば、狭くても無印のような規格住宅が出ればいいんですけど。無印が好きな方は、自分の飽きのサイクルを知ってモノを選んでいる世代。 だから無駄のない白くて四角いフォルムは彼らの中で評価が高い。密集地に並んでもあまり統一感は損なわれないでしょう。
的場
白の家はそろそろ変えるべきではないでしょうか。スリランカのホテルは森と一体化させるため、住まいも緑にしているそうです。日本も、コンクリートジャングルなら白もありかもしれませんが、 自然の中にある家は自然の色にするべきです。
坂本 氏
ただ、白でも真っ白なだけでなくテクスチャーが入ったり、少しづつ変わってはきていますよね。
的場
坂本さんから我々に「日本のためにこれをやれ!」って何かありますか?
坂本 氏
・・・・・・・・そうですね。

例えば、子供に「ジュリアちゃん」と名付けるとします。その子はお祖母ちゃんになっても「ジュリアちゃん」と呼ばれることになる。
それってどうなのでしょうか。
それと同じで、家も長いスパンで考えて欲しいですね。
家を作るときって、ほとんどの家族が冷静でいられなくなる。あれもしたい、これも したい、と何でも取り入れようとしますが、果たしてそれが本当に必要か。 そうじゃなくて、家は必要なものさえあれば、あとから付け足していくこともできますからね。
的場
シンプルを選び、徐々につけ足していくのですね。
坂本 氏
そう。だんだんとそれが分かる世代になっていると思います。

最近のお施主さんは冷静になってきていますね。
外観のみのオシャレに見飽きたと言いますか。建築よりも、住み手主体になってきていますよね。
それに伴って、ハウスメーカーも自社のスペックだけではなく、実は家の中でこんなに出来るって伝えればいいと思うのですが。
的場
私たちはnengoをやっていく上でどのようにすればいいでしょう。
坂本 氏
長いスパンで家を考えろって気付かせてあげるといいのではないでしょうか。
基本的に人は他人のためには動かないですからね。
街を良くしようよ。ではなく、街をこう変えるとこんな素敵になるんですよというように。
例えば同じ家に何十年か住んだ後のことを考えてみる。 その時家に、一体何を求めているのか。 そう考えてみると、自分の飽きるスピードや本当に大切なものが分かってくるはずで すから。
的場
ありがとうございました。
坂本二郎氏  右 坂本二郎氏  右

リビング&ライフスタイルマガジン「LiVES」編集長 坂本二郎(さかもと じろう)氏

1965年9月15日生まれ。
東京出身。
広告代理店の制作ディレクターを経て、 2001年創刊より、編集に携わる。自らの年代を中心とした等身大の住宅情報を発信すると共に、個人的趣味でリノベーションの記事も多く取り上げている。

LiVES:http://www.livesjapan.com/