nengoインタビュー

的場
日本の街並みをどう感じられていますか?
渋谷 氏
例えば、東京は、1つ1つの建物はよく見ると結構頑張ってデザインしているのですが、15年程で次々と建て替わって行くし、その結果として全てがバラバラです。ヨーロッパのように、伝統的な町並みの中に時々前衛的な建築が混じっているのが本来の姿だと思います。一方で東京のようなカオス的な街が海外の人から見ると面白いという意見はありますが。
的場
これからの建物はどうあるべきとお考えですか?
渋谷 氏
標準になる建築のスタイルを定義しなければならないと思います。極端に言えば単なる箱型で良いと思います。器や骨組み自体に個性がありすぎるとテナントが化粧して使いにくいからです。プロポーションと窓の配置はもちろん重要ですが、インテリアやファサードは改装によってフレキシブルに時代の姿を反映して行きます。
渋谷氏 渋谷氏
的場
外観は街のもの、インテリアは個人のものという考えですね。
渋谷 氏
例えば、最近になってビンテージマンションと言われている建物を見ていただければわかるのですが、プロポーションと空間構成は極めてオーソドックスです。ですから時間が経過しても対応できるのです。しかし、建物がこうしたオーソドックスな形にできないのは、実は法規に原因があるのです。
的場
街を美しくする具体的な策を教えてください。
渋谷 氏
まず、壁面の位置を統一すべきだと思います。道からセットバックして建てると高さ制限が緩くなるために、壁面がバラバラになっています。壁面が揃っていないと美しくないし建物の影から人が飛び出してきたりして危ないですよね。次に各種の斜線制限を見直して建てられる建物の形をいびつなものではなく、箱型にします。容積率というのは、よく見直されるのですが、建蔽率も本当に必要なのかどうか再検討する必要があります。公開空地による広場も高い建物の代償として作られるのですが果たして有効に活用されているのかどうか?景観の改善に役割を果たしているのかどうか?もとをたどると、教育をどうにかすべきですね。
的場
教育ですか?
渋谷 氏
例えば、小学校から中学校の家庭科などで、街並、建築、家の手入れについてなどの授業などを行い、生徒全員に家と街の基礎知識を知ってもらうべきだと思います。構造の知識があれば、マンションを買う時にもだまされないし、そんな中から建築の一般常識をもった人々が政治や立法の決定権をもった場合に初めて、こうした法規が良い方向に改正される可能性があるのだと思います。それから、建物は出来た時が最高の状態であるという価値観も変えて行くべきです。まっさらな状態に価値を見出すために、引き渡しの時に異常なくらい細かい傷や汚れを手直しするとか、現状復帰工事を典型とする、スクラップ&ビルドにより、経済的な負担が大きくなり、しかも廃棄物を大量に出すことになっています。時間が経つにつれて味が出てくる仕上げや素材の選択とそれを楽しむ感性の育成も重要だと思います。
的場
ユニークスタンダーズも同じ考えですよね?
渋谷 氏
所有するものは、高額かもしれないけれど、耐久性があり、タイムレスなデザインの物を長く使い続けて欲しいと考えています。家具についても同じで、10年後に買い足したいときに、以前に購入した物がまだ売っていることが理想だし、スタイルと寸法モジュールがコーディネートできることが重要です。定番製品は、ヨーロッパの場合、最初に発明された100年くらい前のモデルが今でも作り続けられていることが多いのです。しかし最近は、企業の合併などにより、そうした製品が消えてしまうケースが増えて来たのは、残念です。
的場
最後にnengoに期待することを一言お願いします。
渋谷 氏
街並みについては変わらないと諦めている人がほとんどです。でも、法規の考え方や常識を知った上でそれを改善するという案を情報発信し続けて欲しい。そんな、地道な草の根運動が徐々に大きくなっていくことを期待しています。
的場
渋谷さん、お忙しいところ有難う御座いました。
渋谷氏 渋谷氏

株式会社ユニークスタンダーズ 取締役 渋谷 聡(しぶや あきら)氏

1957年3月27日生まれ。
東京都出身。外資系設計事務所から、ブランド・コンサルタント会社の役員を経て、2006年にオンラインストア ユニークスタンダーズを立ち上げるための中心メンバーとなる。店頭に並びにくい、ロングライフでスタンダードな製品を探し出して、サイト上で紹介、販売をしている。都市開発や建築に対しても常に機能的で普遍的な回答を提案する姿勢を保っている。

オンラインストア: http://uniquestandards.com/