nengoインタビュー

(株)ホワイトスタジオ代表取締役 (株)ブルースタジオ専務取締役 大島氏
木賃長屋再生プロジェクト「大森ロッヂ」にて

はじめに・・・

リノベーション業界では知らない人はいない㈱ブルースタジオの大島さんに お会いして、日本の街について話を伺ってきました。とても参考になる話も 聞けましたし、話し方まで教えていただいたような気がしています。

的場
日本の街並みについてどうお考えですか?
大島 氏
都市部各所において近年行われている大手の再開発事業はそのスーパーパワー故に往々にして街並みを均質化する傾向にあります。地域性や人間性が付加価値として活かされているケースは稀です。
都市の様々なポイントが次々と均質化されてゆくということは、それぞれの地域が同じ土俵上で競合することを意味しており、地域の価値そのものが時間の経過とともに消費されてしまう危険性をはらんでいます。
的場
何が問題だとお考えですか?
大島 氏
特定の地域が外部から巨大資本というドーピングを受けることによって「不動産の底力」が失われていると感じています。
この底力を失わないために必要なのが、地域に根差した個人や地元企業など零細オーナーを含む「地権者」の意識改革です。行政を含むデベロッパーなどのスーパーパワーに地域活性のタスクを委ねず、地権者自らがどんなに小さくとも、その視点と行動で街の魅力を再発見することです。地域活性とはそもそもその地域の商業、工業、農業などを通した経済の活性化を目指しますが、「街並み」という観点からは、これらの経済活動の器でもある建物や土地の所有者が、自らの保有する不動産資産に対する意識改革を促進させることが必要不可欠なテーマと考えています。
大島芳彦氏 大島芳彦氏
的場
どのようにすれば意識改革が行えるのでしょうか?
大島 氏
地域、街並みの新たな価値とは、物質的な要素のスクラップアンドビルドのみによって創り出されるのではなく、状況の再解釈や異なる視点によって生み出される可能性がある、という認識を持つという事ではないでしょうか。土地、建物とは利己主義的な目的だけに利用されるのものではなく、その集合体、蓄積そのものが社会資産であるということを認識するということです。

その為には、彼ら地権者の底力を応援する不動産金融のシステムと観点がなければいけません。一個人を助ける不動産の金融システムがないのです。固定資産の評価に基づく土地、不動産の担保評価はあれども、その収益性や、社会資産としての価値を評価する価値基準は、収益還元の考え方に基づく不動産ファンドが経済を牛耳る現代においてもまだまだ個人資産のレベルまでは浸透していません。

一般的に彼らは資産はあれども、資金がないのが現状です。金融機関がまだまだ個人不動産資産に関してはその価値を路線価の価値観でしか評価できないのであれば、とるべき再生の手段には「社会資産としての観点を再発見する」という方法が残されています。小さくとも市民レベルで金をかけずに「解釈を変える事によって再生する」という実績を地道に作っていくことが必要ではないでしょうか。
例えば弊社blueStudioの街並み再生プロジェクト「大森ロッヂ」や「学生による木賃アパートリノベーションのワークショップ」などはそう言った取り組みの一例です。湯水のように金をかけ全く新しいものを作り出すのではなく、可能な限り今そこにあるものの良さを、視点を変えて引き出し、その新たな視点と価値を社会に問うという行動です。「なるほど、そういう見方があったね!」というメッセージを社会に発するという事です。
的場
blue Studioとは?
大島 氏
「リノベーション」という言葉がまだ一般的ではなかった10年前ですが、建築家と いう立場から、スクラップアンドビルドに対する疑問と、膨大な数に膨れ上がりつつ ある住宅ストックへの可能性も感じまして、万人にとって身近な存在である中古住宅 のリノベーションを通して同世代の人たちが自分らしい「今」を楽しむことのでき る、「身の丈サイズの」住環境を提案しようとこの事業を立ち上げました。
的場
blue Studioは「建築」よりも「生活」を提案しているように感じます。
大島 氏
 「身の丈サイズで楽しむ生活」「自分らしさを気軽に具現化する」ための手段を発案、提案していきたいと考えています。リノベーションはその中の一つの手段だと思っています。
的場
これからの街並みを良くしていくためには、どうするべきだと思いますか。
大島 氏
 先ほどの地権者の意識改革もしかりですが、まず第一に生活者そのものの「暮らす力」を復活させることが必要です。「暮らす力」= 考えること、工夫すること。だと思っています。
先に、大手の開発はどこも同じで、ーと述べましたが、本来街並みの活性化は、地域によって異なるべきで、それぞれの地域の住人同士の世代を超えたコミュニケーションが必要です。

人と人の繋がり、人とモノの繋がり、地域のコミュニケーション、それぞれをいかに考えることが出来るかが大切ですね。それを中長期的に継続していくことと、住人が自発的に参加していける仕組み作りが必要です。そうすれば街並みの見た目やデザインは、後から付いてくるのではないでしょうか。
的場
最後にnengoの活動に一言お願いします。
大島 氏
 これからは「物作り」の時代ではなく、「物語作り」の時代だという感覚があります。

日常のごく当たり前を繋いでいき、日常の文化をいかに残すか。今、目の前の日常の大事さを考えることが、100年後の日本の姿に繋がるのではないでしょうか。
大島芳彦氏

(株)ホワイトスタジオ代表取締役 (株)ブルースタジオ専務取締役 大島 芳彦 氏

1970年東京都生まれ/1993年武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業/1996年The Bartlett, University Collage London(英国)/1994~97年 Southern California Institute of Architecture(米国)/1997~2000年石本建築事務所勤務を経て、現 職。

株式会社ホワイトスタジオ、株式会社ブルースタジオ
所在地:東京都中野区東中野1-55-4 大島ビル第2別館
TEL:03-5332-9920

ホームページ:http://www.bluestudio.jp/